Works|演奏作品
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
作品について
「相容れない2つの楽器」
ラヴェルによるヴァイオリンとピアノのための作品は4作品あり、比較的多く取り組んだ編成でありながら、当のラヴェルは「この二つはたがいに相容れない楽器である」とした上で、とくにこの作品においては「その対比の均衡をとるどころか、不両立性そのものを強調しているのである」(E.ジュルダン=モランジュ著、安川加寿子・嘉乃海隆子訳《ラヴェルと私たち》)と述べており、その考えは性格も調も大きく異なる要素をそれぞれに同時に振り分ける、といった方法で音楽に反映されています。
この作品はヴァイオリニストでありラヴェルの親友であったH.ジュルダン=モランジュに献呈されています。ラヴェルの《ヴァイオリンとチェロのためのソナタ》(1920–22)を初演した彼女はリューマチ性の疾患を抱えたことで本作品を初演できず、古くからの友人であったヴァイオリニストのG.エネスコとラヴェル自身のピアノにより初演が行われました。
「後期ラヴェルの大実験」
第1楽章〈アレグレット〉は自由なソナタ形式です。はじめにピアノが奏する美しい旋律が楽章全体を通して歌われ、その合間にいくつかのモチーフが浮き沈みします。極めて繊細な線によってかたち作られた楽章です。
第2楽章は〈ブルース〉という題名の通りジャズが取り入れられ(ジャズの要素は20年代以降に作曲されたラヴェル作品にしばしば聴かれます)、バンジョーのようにヴァイオリンが弦をかき鳴らし、それに対し複調の関係をもつ音をピアノが奏するところから始まります。ヴァイオリンにはグリッサンドが、ピアノには複数声部での動きが多用され、ヴァイオリンとピアノには収まりきらないくらいの豊かな楽章といっても良いかもしれません。
第3楽章は〈ペルペトゥウム・モビレ(無窮動)〉と題され、16分音符がひとたび現れると曲が終わるまで止まらないスリリングな楽章です。途中でこれまでの楽章の要素が配されることで楽曲全体をまとめつつ、怒涛のスピードで駆け抜けます。
ラヴェルの《ピアノ協奏曲 ト長調》(1929–31)とこの作品は多くの共通する要素を持っています。「ジャズ」、「無窮動」、「ト長調」、「複調」などなど……本作でラヴェルが探求したいくつもの「実験」が、協奏曲でも大いに反映されているのではないでしょうか。
【編曲にあたって】
第1楽章は複数の要素が同時に現れる部分が多いため、要素同士をはっきりと聴取できるようにソロを多用するなどの方法で吹奏楽の色彩豊かな楽器群を生かしました。
第2楽章ではヴァイオリンとピアノのデュオの中でラヴェルが実践したジャズ的な表現を、吹奏楽の編成に合わせて拡大しました。
第3楽章では曲を貫く16分音符の動きをヴァイオリンが受け持ち続けますが、そのときヴァイオリンのヴィルトゥオジティ(技巧性)を最大限生かすように音が置かれています。これらの音の並びはしばしば管楽器にはかなり無理があるので、吹奏楽・管楽器ならではの技巧を探究しました。
いずれの楽章においてもラヴェルが管弦楽編曲をするときの「姿勢」を模範とし、ラヴェルが管弦楽に対してそうしたように、それぞれの楽器に適した方法でプロフェッショナルな技術を求めています。
初演情報
- 演奏会
- 第3回演奏会
- 初演日時
- 2025年3月7日