Works|演奏作品

博物誌

Composer湯地晃太郎
Duration18'10"

作品について

「革新的な歌曲、周囲みな困惑」

高名なピアノ組曲《鏡》の翌年に作曲された歌曲で、フランスの詩人J.ルナール(1864–1910)の同名の詩集から5つ詩を選び音楽を付けたものです。ラヴェルはルナールにこの詩を歌曲にしてもよいかと尋ね、ルナールはそれを許可したものの、果たしてこの詩が音楽に適しているのか?と困惑したそうです。風刺の効いた詩の表現を活かすべく、話し言葉に近い発音や歌いまわしを多用する斬新な歌唱法を取り入れた意欲的な作品となったものの、初演時はあまりの新奇さに聴衆が驚き憤慨し、失敗に終わりました。ルナールも初演を聴いてさらに困惑し、《博物誌》にいったい何を加えることができたのかと尋ねると、ラヴェルは「私の構想は何かをつけ加えることではありませんでした。それを解釈したのです」と答えました(1907年1月12日付、ルナールの日記より)。

「動物たちの精緻な描写」

J.ルナールは小説《にんじん》で知られる作家で、簡素で日常的な言葉を使いつつ鋭い観察眼で優れた作品を書きました。《博物誌》もその観察眼がいかんなく発揮された詩集で、哺乳類から昆虫まであらゆる動物の印象が生き生きと綴られています。以下ラヴェルの《博物誌》に採用された5つの詩の概略を記載いたします。

〈くじゃく〉盛装したくじゃくの花婿は、いつまでも来ない花嫁を待っている。

〈こおろぎ〉小心者のこおろぎはせっせと住居を修理する。

〈白鳥〉白鳥は優雅に水の上をすべるように動く。だが、実は首を沈めるたびに虫を食べて、がちょうのように太っている。

〈かわせみ〉釣り人の釣り竿にかわせみが止まった。その釣り人の感動が細やかに描かれる。

〈ほろほろ鳥〉好戦的で騒々しいほろほろ鳥。理由もなく家禽たちを追い回す鳥の動きをコミカルに描写する。

【編曲にあたって】

動物たちの動きをユーモアたっぷりに描写する独唱とその歌詞を忠実に反映した伴奏、それらを独唱をもたない吹奏楽へどのように「翻訳」するか……その点に腐心いたしました。

旋律については、歌詞のニュアンスを反映したフレージングを大切にしたうえで器楽曲として自然に聴かせるための改変を行いました。他のパートは原曲(ピアノ伴奏)より振れ幅の大きい表現を目指し、美しい場面はより美しく、コミカルな場面はよりコミカルに、歌詞がなくとも情景がありありと浮かび上がるような編曲にしました。

また本作は27名より演奏可能です。小さな編成だからこそ生まれる透明感や機動性を意識いたしました。

ラヴェルの知られざる美しさや面白さが詰まった本作、お楽しみいただけましたら幸いです。

初演情報

演奏会
第3回演奏会
初演日時
2025年3月7日