Works|演奏作品

夜のガスパール

Composer湯地晃太郎
Duration22'50"

作品について

「幻想的な詩に突き動かされて」

本作は、フランスの詩人A.ベルトラン(1807–41)の散文詩集《夜のガスパール~レンブラント・カロ風の幻想》から三篇選び曲を付けたものです。ラヴェルの少年時代、同級生でのちに名ピアニストとなるR.ビニェスからこの詩を紹介され、そのグロテスクで幻想的な詩に深く心を動かされたことが作曲のきっかけとなりました。

技術的に難易度の高い作品として知られていますが、ラヴェルは当時難曲の代表とされていたM.バラキレフ作曲《イスラメイ》よりも難しいピアノ曲を書くと友人に告げていました。初演はビニェス自身の演奏でおこなわれ、批評家はこぞって彼の素晴らしいテクニックを称賛し、作品は好評を得ました。

しかし、この曲の解釈の差異(特に〈絞首台〉に関して)によってビニェスとの交友関係にひずみが生じ、ラヴェルが彼に初演の依頼をするのは本作が最後となってしまったのです。

「ラヴェルの“ピアノ・ソナタ”?」

ラヴェルは「ピアノ・ソナタ」と題された作品を遺していません。しかし《夜のガスパール》の構成を見てみると、〈オンディーヌ〉:緩徐的なソナタ形式、〈絞首台〉:緩徐楽章、〈スカルボ〉:ロンド楽章という、実は伝統的なピアノ・ソナタの構成を意識して作られたことが分かります。4年前の《ソナチネ》では絶対音楽的な形式美に重点を置いていましたが、それにベルトランの幻想的な世界を導入し自由で複雑な構成へと変貌させることで、ラヴェル流の「ピアノ・ソナタ」を模索したのです。画家レンブラントの陰影の表現をベルトランは詩で、ラヴェルは音楽で表現しました。特殊な技巧をも駆使し圧倒的な音の世界を構築した後、どの楽章も最後はふっと消えるように終わります。そこで我々はいま目の前で起こったことが「幻想」であったと気づくのです。

【編曲にあたって】

近代ピアノ作品の金字塔ともいえる本作、ラヴェルは膨大な情報を超絶技巧を用いてピアノへと集約させましたが、10本の指から解き放たれた時どんな音楽が鳴り響くのか……管楽合奏の持つ音響上の「グロテスクさ」や「妖艶さ」に焦点を当てることでこれまであまり顧みられてこなかった吹奏楽の別ベクトルの表現を拡充しようという、この編成に対する挑戦として本編曲を手がけました。

〈オンディーヌ〉の繊細なパルス、〈絞首台〉で鳴り続ける鐘の音の推移、〈スカルボ〉での静と動の対比、そして全楽章で活躍するドラムセット……これらが本編曲を楽しむ手掛かりとなるでしょう。

初演情報

演奏会
第3回演奏会
初演日時
2025年3月7日